水不足と水切り栽培
植物にとって水は欠かせない重要な要素の一つです。
しかし、トマトの栽培では「水を切る」栽培という栽培方法が有名ですね。水を切ることでトマトにストレスを与え、栄養分を実に送り込ませて濃いトマトを作る栽培方法です。
ですが、植物生理の観点からすると「?」に思うところがあります。詳しく見ていきましょう。
植物生理と水切り栽培
トマトに限らず植物は「根からの肥料吸収」と「光合成による糖分生成」が主な栄養補給となります。
この2つを行うとき、必ず必要になるのが「水」です。
まずは根からの肥料吸収の簡単な仕組みを見てみましょう。
植物は土中にある水溶性となった肥料を水とともに吸い上げますが、この吸い上げる作用は光合成に起因しています。
植物の葉が光を浴びて熱を持つと葉裏の気孔から水分を放出して温度調整をしますが、この時に発生する「蒸散」という作用が水を土中から引き揚げます。
この流れを「蒸散流」と言います。
一方で、光合成においても水は重要で、いくら天気が良くても水や肥料な肥料分がなければ上手に行うことはできません。
光合成力が低下すると糖分が作られなくなり、根から根酸(糖分が根からでて酸化したもの)が出せなくなる。すると土中のミネラルを溶かすことができず、カルシウムやマグネシウム、微量要素の吸収が落ちる=生育不良となります。
結論
水がなければ肥料が吸えません。
肥料分が吸われなければ光合成ができなくなり糖分がうまく作られず、植物の健全な体づくりそのものが出来なくなります。
カルシウムやホウ素がなければしっかりとした体作りができず葉先枯れの症状が、マグネシウムや鉄、マンガンが吸えばければ光合成そのものに影響を与え、葉脈間から枯れていきます。
もちろんチッソも水に溶けて吸われるので、それが吸われなければ生育そのものに影響を与え、葉全体が黄ばんで枯れていきます。
すなわち「枯れ」というのは「水不足による養分吸収不良」ともいえるわけですね。
人間がストレスを感じれば体に大きな負担がかかると同様に、植物もストレスを感じることで良い方向に行くかというと決してそうではありません。
「水を切ってストレスを与える」という考え、見直す時が来ているかもしれませんね。