ソバージュ
栽培®
ソバージュ
栽培®
ソバージュ栽培®とは
ミニトマトの露地栽培で、野性的(ソバージュ)に育てる栽培方法のこと
ハウス栽培と異なり、できるだけ設備投資を少なくし、省力化することにより低コストで高収益を目指す、トマトの新しい栽培方法です
ソバージュ栽培の特徴
- できるだけ人手を加えず、放任に近い形の栽培
- 設備はU字支柱とネットにマルチのみで、初期投資を大きく削減
- 株間は80~100cm、条間、畝間は2mとゆったりとる
- 交配作業は行わず、誘引や芽かきを必要最小限にするため、労働時間が大幅に軽減できる
- 葉も多く根も大きくなるため、乾燥に強く、裂果や尻腐れ果の発生も少ない
- 病害の発生も少ないため、農薬の散布回数や散布量も減り、より安全な果実を供給できる
葉かきは不要
- 葉の枚数が多いほど光合成能力は高まる
- ハウス栽培で葉かきをするのは、風の流れを良くすることに より湿害になりやすい状況を防ぐためであり、露地はハウスより風が通る
- トマトの重要な成分である「リコピン」生成の温度帯は12~32℃(適温は20~25℃)である
- 夏の露地栽培では、葉の繁茂による葉陰(リーフカバー)で 温度を抑制することがポイントである
芽かきは不要
- 芽かきをして成長点を制限すると、実の大きさは安定しやすいが、水分や気温、湿度など環境変化に敏感になり、樹勢の管理が難しい
- 成長点が多いと窒素や水分の吸収が分散される
- 根の張リは地上部の生育に比例するため、芽かきをしないことで、地上部は繁茂し、根の張りも強くなり、環境変化に適応する
根張りが旺盛
- 吸収力が高まり、水や窒素だけでなく、力ルシウムやほかの成分もよく吸収するため、大玉トマトでよく発生する尻腐れ果(力ルシウム欠乏) は起こりにくくなる
- 根が深いところまで伸びるため、地表面と異なり干ばつや日照による地温の上昇など天候の影響を受けにくくなる。
圃場準備・施工
1. 畑の選定
- 土質はあまり選ばないが、排水が良く、しかも保水力があり、有機質の多い土壌が適する
2. 土壌改良
- 土壌改良資材と堆肥などの有機物(堆肥は必ず完熟したものを使用)を全面施用し、耕起を深めに行い、土を膨軟にするとともに排水対策を十分に図る(土壌改良資材は土壌条件によって施用量を加減する)
3. 基肥
- ハウス栽培より多めにし、樹勢維持のため全面施肥を行う
- 長期間肥効がある肥料や有機質を含んだ肥料を主体として施用する
- 施肥量(土壌改良材も含める)は土壌診断をもとに決める
- 暖地および温暖地では右図より少な目にする
- 裂果や尻腐れ果などの対策として苦土石灰を通常より多めに200㎏程施用
- 最終的な施肥量は土壌診断をもとに決める
4. 耕起・畝立て
- 畝立て・マルチ作業は土壌水分が適度にある状態で行う
- 定植1週間前にはマルチをして地温を高めておく
- 畑の排水不良が心配される場合は、畦の高さを20cm前後とする
- 畝はU字パイプの幅にあわせて幅90cm前後にする。条間は2m程度とし、作業性を良くする
- 畝間に防草シートを設置することにより、雑草対策と乾燥防止に役立てる
5. 支柱・ネットの設置
- 収穫作業を支柱の外側だけでなく内側からも行うため、支柱の幅および高さはともに2mを必要とする
- 支柱をつなぐ直管パイプは、支柱天端中心に1本、横(地上120cm程度)2本は必ず設置する。 できれば支柱曲管部に2本の計5本を設置したほうが良い。 さらに暴風や豪雨に耐えられるように筋交や単管パイプで補強する
- ネットはキュウリ誘引用のネットを利用する
6. 支柱設置時のポイント
- 支柱が低かったり狭かったりすると内側から収穫できないため気を付ける
- 畝間に防草シートを設置することで、作業しやすいうえに雑草対策になる
- 台風など大風を考慮した設営が重要となる
ソバージュ栽培®の実際
適作型と栽培
【ソバージュ(露地省力)栽培暦】
1. 苗の準備
- 定植の2か月前から準備 ※定植時期から逆算
- 土壌病害を避けるため、接木苗を推奨
- 樹勢を維持するため、50穴セル苗か9cm以上のポット苗を使用
2. 定植
- 定植時期は、遅霜の心配のない5月中旬以降が望ましい
- 第1花房の1番花が固いタイミングで定植する(樹勢の強化)
- 晴れて風も穏やかな日を選んで定植する
- 植え付け前にポットに十分潅水しておく
- 植え付け時に花の向きをそろえるとその後の管理が容易になる
- 植え付け後、直ちに誘引を行い、風による痛みを防ぐ
3. 定植後の管理
- 生育初期は風で茎が折れないようテープナーなどで枝をネットに誘引する
- また、根が活着するまでは灌水が必要
- 活着し、ある程度樹勢が旺盛になりだしたら株元の整理をはじめる
4. 整枝・誘引
- 株元の通気を良くするため、2段目の果房まではわき芽を摘除する
- 主枝は直立させ適宜ネットに止める
- ある程度繁茂したら、マイカ線などで引き上げる。
※ 肝心なことは枝が地面に垂れ下がらないようにすること
5. 追肥
- 1回目の追肥は定植後50日程度から草勢を見て行う
- 目安は3段開花、あるいは1段着果の頃
- 肥効の急なものは望ましくない
- 5月下旬定植の場合、8月中旬から下旬にかけて収穫のピークを迎えるため、葉面散布や土壌濯注なども組み合わせ、草勢の維持をはかる 2週間に1回 窒素成分で 1~2㎏(10a 当たり)を通路に施肥
6. 裂果
- 雨による土壌水分の変動や強い直射日光を受けた場合に裂果しやすい。特に株元に近い果実は裂果しやすい
- 高温や干ばつによる果皮の老化も影響する
- 露地で、雨よけなしで栽培することから、ある程度の裂果はやむを得ない
- 軽減策として、肥沃で排水の良い土壌にすることが最も有効である
- 水田転換畑では、耕盤の破砕や圃場全体の深耕を行うほか、暗渠や明渠を設置して排水性の向上を図る
- リーフカバーで日差しによる日焼け、乾燥および果面温度の上昇を抑えるとともに、雨が直接果実に当たらないようにする。 そのため、生育初期に樹勢を強めて茎葉を繁茂させる。生育後半は葉の少ないところに枝を再誘引する
- 割れた果実はすぐに落とす(着果負担の軽減、病害虫の予防のため)
7. 収穫・調整
- 収穫は完熟果を順次摘み取る
- 未熟果は収穫後に着色するが、食味が著しく落ちる
- 高温期には早朝の涼しい時間帯に収穫する
- 生育盛期に徒長した枝は切り落とし、必要以上に繁茂させないほうが収量性、品質および収穫作業の効率化の面で利点が多い
- 栽培の特性上、根が強く深く伸びていくための土づくりが求められる。特に、水田転換畑では、土壌物理性の改善が重要である
- 短期間で高収量とそれに見合う養分補給を行う。 1か月半から2か月で夏秋ハウス以上の収量が見込めるが、養分の収奪も激しく、それを補う肥料をバランス良く施肥する
- 収穫回数を多くして着果負担を軽減することにより、栄養成長と生殖成長のバランスを良くする(工ネルギーを成長点へ)
収穫期の目安
8. 病害虫対策
葉や茎、果実などに発生し、葉には褐色水浸状の円形病斑を、果実には水浸状の病斑を生じ、表面に灰色のかびを生じる。 低温、多湿、多肥条件や芽かき、葉かきなどで傷がついた時に発生しやすく、特に古い花弁から発生することが多い。
ソバージュ栽培では、生育後半から終期にかけて多く見られる。 罹病した花や葉などの被害部分を取り除くのはたいへんなため、予防と初期防除に努める。
下葉より小斑点が生じて周囲は黄色くなり、病状が進むと上位葉に蔓延する。 8月後半より発生が見られる。発生前に薬剤を定期的に散布し、予防することが大切である。
病原菌は土壌中に生息する細菌であり、トマトのほかにも、ナスやピーマン、ジャガイモ、イチゴなど200種以上の作物を侵す多犯性の典型的な土壌伝染性の細菌病である。
発病株は周囲への伝染源となるため、見つけ次第抜き取る。 被害作物は圃場に鋤きこまずに焼却処分する。 汚染している圃場で使用した農機具は良く洗浄・消毒する。
関東地方などの温暖地では水田転換畑などの土壌水分が多い圃場で発生している。
疫病は地上部のあらゆる部分に発生し、葉でははじめ灰緑色水浸状の病斑を生じ、拡大して暗褐色の大型病斑となる。 露地栽培では風雨で土がはね返り被害が多くなる傾向にあるため、畝にマルチをして土のはね返りを防ぐ。チッソ肥料が多いと茎葉が繁茂し、被害を助長するので注意する。
明治大学の研究で明らかになったこと
供試品種
試験方法
調査項目
1. ソバージュ栽培と1本仕立ての収量の比較
面積当たりの収量(kg・a-1)
1本仕立てと比べた場合、 面積当たりの収量は、株数が1/6(明治大学での試験設計の場合)にも関わらず、面積当たりでは同じくらい採れることが明らかになった
1株当たりの収量(kg/株)
1株当たりの収量は、ソバージュ栽培が顕著に多いことが 明らかになった
神奈川県のような温暖地の場合、慣行栽培では夏場は暑くて収穫できない場合があるが、ソバージュ栽培は8月以降の暑い時期にも採れることが明らかになった
Tukey の多重検定により、異なる符号間に 5%水準で有意差あり(n=3)。 各処理間において、符号の大文字は総収量、小文字は月別収量の比較を示す。 小文字は下から順に、7、8、9および10~12月を示す 1.0および0.4は株間を示す
2. ソバージュ栽培と1本仕立ての品質の比較
リコピン含量が多い
糖度は、ソバージュ栽培が1本仕立てに比べてやや低いことが明らかになった。
リコピン含量は、ソバージュ栽培が1本仕立てに比べて同程度か高い傾向にあることが明らかになった
3. 株間による収量の比較
株間は1m前後が良い
- 株間を広げた場合に、収量がどのように変わるか調査した。 横手市では0.9mで進められているが、明治大学の研究では1.6m、1.0mおよび0.4m で比較した
- 株間を1.6mまで広げると収量は減少したが、1.0mおよび0.4mの場合は差が見られなかった。 そのため、苗代・定植の手間を考慮すると、温暖地の場合は 1.0m程度が適していると考えられた
各栽培法における作業項目別の作業時間
収獲時間が長い理由として、葉が繁茂して収穫適期の果実 を探す時間がかかることが考えられる。そのため、今後は こうした収穫方法の改善も考えていく必要がある
各栽培法における作業項目別での時間割合(%)
5. 糖含量およびアミノ酸含量の品種間差異
品種は、ロッソナポリタンがオススメ!
味の素社の協力により、糖およびアミノ酸含量を計測した。糖およびアミノ酸含量は、品種間差異、地域間差異および栽培法による差異があり、供試品種のなかでは、ロッソナポリタンのアミノ酸含量が最も高かった
収獲時間が長い理由として、葉が繁茂して収穫適期の果実 を探す時間がかかることが考えられる。そのため、今後は こうした収穫方法の改善も考えていく必要がある